例題 奇数列+総和の問題
正の奇数の列を、次のような群に分け、第k群にはk個の数が入るようにする。
1 | 3 , 5 | 7 , 9 , 11 | 13 , 15 , 17 , 19 |……
このとき、次の問いに答えよ。
(1)第n群の最初の項を求めよ。
(2)第n群の項の総和を求めよ。
群数列も普通の数列です。規則さえわかれば、教科書に書いてあるような手順を踏まえなくても解くことが可能ですが…。
とりあえず以下に解法パターンを紹介します。
(1)の問題が解ければ、(2)はそれほど難しくはありません。
(1)を解く方法を3パターン紹介します。とはいっても、実際解き方として認められているのはパターン①だけです。記述式問題の時にはパターン①の解答でないと点数が減点されたり、合っていても0点にされたりすることもあるようなので注意してください。
(1)第n群の最初の項を求める問題の解き方
パターン①教科書の例題パターンをわかりやすく解説
数列に「群番号」と「通し番号」つけて考えていきます。
群番号 | 第1群 | 第2群 | 第3群 | 第4群 | 第(n-1)群 | 第n群 | |
通し番号 | ① | ② ③ | ④ ⑤ ⑥ | ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ | …… | …………● | ●… |
項の数 | 1 | 3 , 5 | 7 , 9 , 11 | 13 , 15 , 17 , 19 | …… | □… |
解き方のレシピ
①各群の末項の「通し番号」に注目し、「項の数の個数の合計」と比較して法則を確認します。
②(n-1)群の末項が「通し番号」でどう表せるかを計算します。
③②で出した数に「+1」をして、第n群の初項の「通し番号」を出します。
④③を「項の数」の数列の一般項に代入して計算します。
⑤おいしい(?)第n群の初項の数の完成です。
①各群の末項の「通し番号」に注目し、「項の数の個数の合計」と比較して法則を確認します。
通し番号の各群の末項に注目してください。
群番号 | 第1群 | 第2群 | 第3群 | 第4群 | 第(n-1)群 | 第n群 | |
通し番号 | ① | ②③ | ④ ⑤ ⑥ | ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ | …… | …………● | ●… |
項の数 | 1 | 3,5 | 7,9,11 | 13,15,17,19 | …… | □… | |
「項の数」 の個数 | 1個 | 2個 | 3個 | 4個 | …… | (n-1)個 | |
「項の数 の個数」の 合計 | 1 | 1+2=3 | 1+2+3=6 | 1+2+3+4=10 | …… | 1+2+3+4+…+(n-1)=● |
項の数の個数の合計が通し番号の末項と同じだと確認できました!…(A)
②(n-1)群の末項が「通し番号」でどう表せるかを計算します。
(A)の性質を利用して、(n-1)群の末項の通し番号を求めていきます。
そうすると、(n-1)群の末項の通し番号(表中の●の部分)は、
1+2+3+4+……+(n-1)=\(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)\)
③②で出した数に「+1」をして、第n群の初項の「通し番号」を出します。
第n群の初項(表中の●の部分)は、通し番号で次の項なので、1足せば出てきます。
よって、通し番号は\(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)
④③を「項の数」の数列の一般項に代入して計算します。
表中の「項の数」の数列は、初項1、公差2の等差数列なので、\(a_{n}=2n-1\)。
この数列の第\(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)項目を求めれば、表中の□の部分が出てきます。
=\(2\cdot \left\{ \dfrac{1}{2}n\left( n-1\right) +1\right\} -1\)
==\(n^{2}-n+1\)
つまり、第n群の初項は、
\(n^{2}-n+1\)
⑤おいしい(?)第n群の初項の数の完成です。
パターン②直接第n群の初項を求める方法(筆記で使うと×にされる可能性大)
階差数列で解く解法なので、「推測に過ぎない」という理由から使ってはいけない禁じ手です。
しかし間違いなくできますので、「裏計算」や「過程を書かなくてよい場合」などに活用してください。
各群の初項を並べてみます。
第1群 の初項 | 第2群 の初項 | 第3群 の初項 | 第4群 の初項 | …… | 第n群 の初項 |
1 | 3 | 7 | 13 | ここを求める |
この数列の一般項を求めれば、それが第n群の初項になります。
\(a_{n}\)を1,3,7,13…とすると
この数列の階差{bn}は、2, 4, 6…
{bn}は初項2、公差2の等差数列です。
よって、bn=2n となるので、
\(a_{n}=1+\sum\limits_{k=1}^{n-1}2k\)
=\(a_{n}=1+2\sum\limits_{k=1}^{n-1}k\)
=\(a_{n}=1+2\cdot \dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)\)
=\(a_{n}=n^{2}-n+1\)
\(n=1\)のとき\(a_{1}=1\)となり、成り立つので、
よって、\(a_{n}=n^{2}-n+1\)
つまり、第n群の初項は、
\(n^{2}-n+1\)
このように、階差数列で考えても解けるんです。本当は。
数学的帰納法でこの解が正しいことの証明もできます。
数学的帰納法を用いた証明
n=1のとき
\(a_{1}=1\)
\(n^{2}-n+1=1\)
よって成り立つ。
n=kのとき
\(a_{k}=k^{2}-k+1\)が成り立つと仮定すると、
n=k+1のとき
\(a_{k+1}=\left( k+1\right) ^{2}-\left( k+1\right)+1\)
=\(k^{2}+k+1\)
また、仮定より、k群にはk個の奇数が並んでいるので、(k+1)群の初項は、k群の初項に2kを加えたものである。よって(k+1)群の初項は
\(k^{2}-k+1+2k\)
=\(k^{2}+k+1\)
n=k+1の時も成り立つ。
したがって、すべての自然数に対して成り立つ。
この解き方がダメな理由
この解法では点数をくれない先生が多いようです。その理由は、「階差数列は予測でしかなく、本当にそうなるかどうかが分からないから」ということになるそうです。
もしかしたら、階差数列で解いた計算の後でそれが成り立つことを数学的帰納法で証明したものまでを解答に書けば、〇がもらえるかもしれません。
でも、それはあまりに面倒だしリスクも高いので、普通にパターン①を覚えた方が得策です。
パターン③「第何項目か」に着目する方法(筆記で使うと×にされる可能性大)
これも記述問題には不向きです。点数もらえない可能性大です。でも解けます。
群数 | 第1群 | 第2群 | 第3群 | 第4群 | 第(n-1)群 | 第n群 | |
通し番号 | ① | ② ③ | ④ ⑤ ⑥ | ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ | …… | ………… | ●… |
項の数 | 1 | 3 , 5 | 7 , 9 , 11 | 13 , 15 , 17 , 19 | …… | □… |
上の表のように、群を無視した「通し番号」を加えました。第n群の初項なので、●が第何項目かを考えていきましょう。
通し番号の各群の初項の番号は以下のようになります。
第1群 の初項 | 第2群 の初項 | 第3群 の初項 | 第4群 の初項 | … | 第n群 の初項 |
① | ② | ④ | ⑦ | … | ここを求める |
この数列の一般項を求めれば、それが第n群の初項の通し番号になります。
階差数列をとります。
\(a_{n}\)を1,2,4,7…とすると
この数列の階差{bn}は、1, 2, 3…
{bn}は初項1、公差1の等差数列です。
つまり、\(a_{n}\)は、初項1、bn=nの階差数列です。
\(a_{n}=1+\sum\limits_{k=1}^{n-1} k\)
=\(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)
\(n=1\)のとき\(a_{1}=1\)となり、成り立つので、
よって、\(a_{n}=\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)
各群の初項の通し番号の一般項、つまり第n群の初項(上記表中の●)は
\(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)
群数 | 第1群 | 第2群 | 第3群 | 第4群 | 第n群 | |
通し番号 | ① | ② ③ | ④ ⑤ ⑥ | ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ | …… | \(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)… |
項の数 | 1 | 3 , 5 | 7 , 9 , 11 | 13 , 15 , 17 , 19 | …… | □… |
「項の数」の群を取り払った数列は、初項1、公差2の等差数列なので、
\(a_{n}=2n-1\)
この数列の第\(\dfrac{1}{2}n\left( n-1\right)+1\)項目は、
=\(2\cdot \left\{ \dfrac{1}{2}n\left( n-1\right) +1\right\} -1\)
==\(n^{2}-n+1\)
つまり、第n群の初項は、
\(n^{2}-n+1\)
このように考えても解けます。
しかしこれも階差数列なので…
先にも書いたようにパターン②と同じで、点数はもらえない可能性大です。
しかし、この解き方はパターン①の解き方の裏をとったような手法であり、パターン②よりも明白で証明する必要もないくらいです。それなのに階差数列を利用してはいけない理由を「予測に過ぎない」で片付けるのは乱暴じゃね?っていうのが私見です。
しかし、塾講師という立場上、点数の取れない方法で教えるわけにもいきませんので、面倒くさくてもパターン①の方法で覚えること!
しかし答えを出すだけでいいなら、パターン②や③のような階差数列を使うパターンも使えますので参考にしてみて下さい。
(2)第n群の項の総和を計算する
(1)さえクリアすれば、(2)の問題は、等差数列の和の公式で解けます。
初項a、公差d、項数nとしたときの等差数列の和の公式
\(S_{n}=\dfrac{1}{2}n\left\{ 2a+\left( n-1\right) d\right\}\)
この問題の場合、第n群は項数がn個なので、
初項\(n^{2}-n+1\)、公差2、項数nです。これを代入していきます。
\(\dfrac{1}{2}n\left\{ 2\left( n^{2}-n+1\right) +\left( n-1\right) \cdot 2\right\}\)
=\(n^{3}\)
(2)の解法は、普通通りですがこれが順当だと思います。
群数列を解くコツ
私がこの記事で言いたいことは、
「どのパターンで解けばいいのか」が重要なのではなく、「どんなパターンで並んでいるのか」を解明していくことが重要ということです。
「解法」ではなく「解明」が大事。
他の問題にも言えることだと思います。
とはいえ、理屈が分からないうちに解明も証明もないので、まずはレシピに従って問題を解いて、理解してからアレンジしていきましょう。
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